今さら聞けないけど、「リア充」ってどういう意味?
「リア充」は2005年頃に日本のインターネットコミュニティから誕生した言葉で、ネットスラングとして広がり、今では一般的な用語としてすっかり浸透しています。リア充とは「仕事で成功したり、恋人や友達づきあい、家族に恵まれていてリアルの生活が充実している人」という意味ですが、そこにはリアルの生活に満足感の低い人からの“うらやましさ”“妬み”“自分とは違うという線引き”など、複雑な感情が含まれていると言われています。日本では当たり前のように使われていますが、海外では「リア充」のことを何と言うのでしょうか?
リア充は日本から生まれた言葉
「リア充」は日本の文化から生まれた言葉です。そのため、リア充に対する海外の反応や受け止め方は千差万別です。そもそも「リア充」という言葉がない国が大半で、
- 「是什么 リア充?」(中国)
- 「リア充 có nghĩa là gì?」(ベトナム)
- 「O que significa リア充?」(ポルトガル)
- 「What is the meaning of リア充?」(アメリカ)
など、インターネット上で、日本に来た留学生や社会人などが「リア充ってどういう意味?」と質問しているのを見かけることがあります。
逆に、「What is the english meaning of “Riajuu”?」(リア充って英語では何というの?)という、日本人からの質問も見られました。そこで、インターネット翻訳で各国語の「リアルが充実している」を検索してみたところ、次のような訳文が表示されました。
英語では「full of realism」です。アジア圏では、韓国語が「리얼이 충실하다」、中国語が「充滿現實主義(充满现实主义)」となります。ヨーロッパ圏では、スペイン語は「lleno de realismo」、ギリシャ語は「γεμάτο ρεαλισμό」、イタリア語は「pieno di realismo」、フランス語は「plein de réalisme」、ドイツ語は「voller Realismus」です。
でも、これらの言葉は「リア充」とは少しニュアンスが違うかもしれません。リア充はネットスラングなので、若者がよく使う砕けた言葉です。各国で、リア充に該当する若者言葉やスラングはあるのでしょうか。
英語はNormie
英語では「Normie」と言うのが一般的です。Normieもネットスラングで、標準・平均・正常などを表す「normal」が変化した言葉です。標準的な人を意味する「normal person」のスラングです。
normal person(ノーマル・パーソン)は「普通の人」や「一般人」という意味で、リアルな社会に順応している人を指しています。つまり、仕事にやりがいを感じ、プライベートでは恋人や友達と楽しく過ごしている人のことです。
リア充と言えば「リア充爆発しろ!」という言葉が有名ですが、英語訳では「Normies explode!」とか、「Normies can go burn!」と表現するようです。
この他、「social life」と表現することもできます。直訳すると「社会生活」ですが、「社交的な生活」という意味もあります。例えば、「Taro is always out with friends. He has an amazing social life.(和訳:太郎はいつも友達と出かけている。彼ってマジでリア充~)」など、日常用語でも使われることが多い言葉です。
アメリカといっても広いですし、さまざまな人種や宗教、価値観の人たちが暮らす国ですから一概には言えませんが、日本語で言うところの「リア充」という言葉は、それほど浸透していないと考えられます。日本に比べて個人主義が確立していますから、自分がリア充かどうかをそれほど気にしない人が多いのでしょう。
しかし、集団生活で人気を集める人もいれば目立たない人もいるのは、アメリカでも同様です。集団生活にうまく馴染めない人にとっては、社交的な人たちをリア充と感じるシーンも多いことでしょう。若者にとって、そのような格差が特に顕著になるのがプロムだと言われています。
アメリカのドラマや映画で登場することが多いので、ご存じの方も多いかもしれません。プロムとは高校生が出席するダンスパーティーで、特に高校卒業を目前に開催されるシニア・プロム(Senior prom)は、高校生にとって最大のイベントと言っても過言ではありません。
欧米社会において、パーティーは1人で参加するものではなく、カップルで参加する文化が根付いています。プロムも、原則として男女のカップルで参加するフォーマルな形式の催しです。日本の卒業パーティーと成人式が合わさったようなイベントと言えるかもしれません。
このような華やかな催しでは、当然、モテる男子や女子が花形となりますから、リア充と非リア充の格差がくっきりと表れます。実際に生徒たちの投票によって、一番素敵な男子である「プロムキング」と、一番素敵な女子である「プロムクイーン」が選ばれます。毎年、プロムキングにはスポーツで抜群の成績を出している男子、プロムクイーンにはチアリーダーといった、リア充そのものの人気のある子が選ばれることが多いのです。このような場所に、ヲタクで非リア充の日本の男の子が迷い込んでしまったら、「リア充爆発しろ」とつぶやいてしまうかもしれません。
韓国語のリア充は?
同じ東アジアでは、日本のアニメ文化が伝わっていることもあり、欧米や他の地域の国々に比べると、リア充という言葉になじみがある国が多いようです。
韓国語では、「리얼충(リオルチュン)」と言います。リアルを意味する「리얼」と、充実を意味する「충실」が組み合わさった造語で、日本語とよく似た構造です。
また、若い人たちは「인싸(インサ)」ということも多いようです。インサイダーの略語で、いつも人に囲まれている人気者という意味があります。これの反対語として、「아싸(アウサ)」も良く使われる言葉です。インサイダーに対するアウトサイダーで、友達の輪に入ることができず、周囲に溶け込めないボッチや非リア充のことを言います。
また、韓国の人気シンガーソングライターの10cm(シプセンチ)に「봄이 좋냐??(春が好きか?)」という楽曲があります。この歌詞が「リア充爆発しろ」を意味していると、ネットで話題になりました。10cmは韓国の星野源と称されることもある、人気のシンガーです。韓国のテレビドラマの主題歌も多く手がけています。
現在はソロとして活躍していますが、もともとはデュオグループでした。「春が好きか?」は、デュオグループ時代の曲です。花盛りの春なのに失恋してしまった男の子が、「おまえらそんなに春が好きか?桜がそんなきれいか?マヌケどもめ、結局桜は散る、お前らも散ってしまえ、俺の前で彼女と手をつないだり、腕を組んだりしていちゃつくな、お前ら全員ダメになれ」という意味の歌詞が、美しいメロディーとともに流れます。恋を謳歌するリア充に対して、「散っちゃえ!」と言っているのが、「リア充爆発しろ」と同じ意味だということで、ネットでも話題になったのです。
中国・台湾では「現充」
中国や台湾では、「現充(现充)」と言います。現実が充実しているといった意味でしょう。こちらも、日本語と構造がよく似ています。「リア充爆発しろ!」は「現充爆炸吧!」とか、「现充的都给我爆炸吧!」などと表現します。
台湾ではリア充を「人生勝利組」とも言います。文字を見ると、そのままの意味がダイレクトに伝わってきます。「人生勝利組」とはビジネスもプライベートも充実している、まさに人生の勝ち組のことで、特にビジネスで成功を収めたお金持ちの人に当てはまる言葉です。日本でも勝ち組という言葉がありますが、ほとんど同じような意味で使われています。
日本のアニメは中国や台湾でも人気で、ヲタクカルチャーが浸透しています。アニメの放映などで、ヲタクやリア充という言葉が中国にも広がったのだと考えられます。ちなみに、ヲタクは中国語で「御宅」と言いますが、台湾では「宅男」と言うほうがポピュラーです。中国語は漢字文化の発祥国ですから、漢字で表現されると、中国語を知らない私たち日本人にも何となく意味が伝わります。
フランスなどヨーロッパには「リア充」という概念がない?
韓国や中国、台湾では、日本と同じようなニュアンスで「リア充」という言葉が使われています。その一方で、フランスなどヨーロッパ各国には「リア充」に該当する言葉そのものが存在しないと言います。あえて表現するなら、「RIAJU」とローマ字表記にすることになるでしょう。
もしくは、「IRL(アイ アール エル)」というネットスラングが、リア充に該当する言葉と言えるいるかもしれません。IRLとは「In Real Life」の単語それぞれの頭文字を組み合わせた造語で、「現実世界において」という意味で使われます。
「これはインターネット上の世界ではなく、現実のリアル世界の話」とネットとリアルの線引きを示すことで、今の話題がネット上の事柄なのか、リアルでの事柄なのかを明確にして、誤解を生まないようにするための言葉と言えます。IRL自体に充実という意味は含まれていないので、リア充という意味で使うのはちょっと違うかもしれません。使うとすれば、「彼はネット世界ではモテるけど、IRLでは全然モテない」などと表現されるのでしょう。
ちなみに、「リア充爆発しろ」のフランス語は「リアジュボーン」、という笑い話がネットで流通しています。リア充がボーン!と爆発するという「リアジュボーン」をなめらかに発音すると、何だかフランス語っぽく聞こえませんか(笑)。もちろん、フランス人に向かって「リアジュボーン」と言っても通じません。日本のジョークです。
そもそもフランスでは、リアルで充実していようが、ネットで充実していようが、気にしない人が多いと言います。もし、非リア充から「リア充爆発しろ」と言われたとしても、「何、言ってんの?あなたに関係ないでしょ?」と反論されるか、スルーされるでしょう。そもそも、「リアルで恋人がいようが、ネット上の友人と盛り上がろうが、人生が楽しければ何も問題はない。そこに格差は存在しないでしょう?」というスタンスが、自由を愛するフランス人なのではないでしょうか。
リアルもネットも積極的に楽しもう!
リア充だから、非リア充だからと、人と自分を比べたり、逆に人をバカにしたりしないことが、人生を充実させるコツなのかもしれません。フランス人にはそんな軽やかさがあるような気がします。私自身、リア充/非リア充だとか、勝ち組/負け組という二極化のカテゴライズはナンセンスだと思っています。
これだけインターネットが生活に入り込んでいる現代社会において、リアルとネットの差はどんどん縮まっています。近年は新型コロナウイルスが流行し、仕事もインターネットを通じて行うのが日常的になりました。そんな日々の中では、オンラインもオフラインも両方、とても大切です。リア充でも、2チャンのまとめサイトを見て、ネットゲームを趣味にしている人は多いでしょう。また、あえてヲタクやボッチを楽しむ人も大勢います。今やリアル・非リアルの境界は曖昧になりつつあります。
リア充という言葉が海外でどれほど通じるかはわかりませんが、ネットゲームなどでは英語でチャットすることもあります。そんな時に、サラッと英語のネットスラングを交えたチャットができたら、インターネットでの交流がもっと楽しくなるのではないでしょうか。また、外国の方から「リア充ってどんな意味?英語で説明して!」と尋ねられることがあるかもしれません。そんな時に「”Riaju” means someone who leads a fulfilling daily life, for example, at work or in a romantic relationship.(和訳:「リア充」は仕事や恋愛などで日常生活が充実している人のこと)」などと説明できると、海外との文化交流が深まりそうです。リアルもネットも積極的に楽しんだほうがおトクだと思いませんか?
リア充の基本や定義については、「リア充の意味や定義・条件・略語。時代と共に変化していった流行の歴史について」の記事でまとめています。
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