もはやリア充は死語なのでしょうか
リア充とは、「リアルが充実している人」という言葉の略語です。
「リアル」とは私生活を指しており、私生活が充実している人と解釈可能です。
仲間や友達も多い、恋人がいるなど人間にとって、恵まれている人を指しています。
なぜ「リアル」が私生活なのでしょうか。
リア充はもともとインターネットの掲示板上で生まれました。
ネットの世界と表裏一体となっているのが私生活で、ヴァーチャルの対義語だからリアルと位置付けられています。
コミュニケーションが苦手な大学生が、リアルな世界（実生活）において仲間に恋人ができたことを妬む気持ちとうらやむ気持ちが入り混じってできました。
残酷な気持ちになった時には「リア充爆発しろ」と相手を羨望と嫉妬が入り混じった気持ちで称賛する派生語も生まれました。
この言葉は2005年ころにインターネット上で爆発的に流行し、学生の間で使われる言葉として定着しました。
2011年には女子中高生ケータイ流行語大賞で金賞を受賞した経緯があります。
息の長い言葉となり、このところでは国語辞典にも現代語として掲載されています。
しかし、2021年から2022年にかけた情勢の変化や私たちの価値観の変化によって「リア充」は現在の若い世代の生活にそぐわなくなってしまったようです。
時代のギャップによって意味変わった印象もあります。
死語となったのか？と問われれば、必ずしも完全な死語ではありません。
しかし、国内外における社会情勢の著しい変化から若い世代の間では古いと感じあまり使われることがなくなっているのも事実です。
このことからも、会話の中で使うときには用法に注意すべき言葉だと認識すべきでしょう。
リア充の意味が変わった理由
リア充は「仲間に恵まれている、恋人もいる、アルバイトや親の援助によってそれなりにお金もある」というように、順風満帆な私生活を送っている人を揶揄する意味で使われてきました。その時代は、これらを手に入れるのが当たり前でした。
手に入れたくてもなんらかの障壁があって手に入れることができず、羨望の意を持っている人が相手を評価する言葉であることを理解しなければいけません。
自らをリア充と称する言葉ではないことがポイントです。自らをリア充と称することは、当時のリア充の意味を知っている人にとっては鼻につく言葉になって届くので気を付けましょう。
2020年代の今では一人に一台モバイル端末が持てる時代になったため
インターネットを駆使できる人が少なかった2000年代初めに生まれた「リア充」ですが、瞬時に情報が拡散されるSNSも浸透し、ヴァーチャルとリアルといった区別もほぼなくなっています。今ではヴァーチャル世界にいる人がリスペクトされることも増えてきました。このようにヴァーチャルもリアルの一部として認識されています。
新型コロナウイルスによって、社会活動が寸断されたため
また、2020年に世界的大流行に発展した新型コロナウイルスによって、学業や一部の仕事など社会活動が寸断されてしまいました。
このことから「リア充」の言葉を象徴する「仲間、恋人、お金」の条件を満たせない人が多くなりました。
つい最近までリア充だった人が経済的事情から大学を中退するという事案も少なくありません。
個人を尊重することが重視されるようになったため
また、必ずしも仲間や恋人を作る必要がないという風潮も定着しつつあります。個人を尊重することが重視されるようになり、誰かに合わせることなく、自分の生活を大切にすることが大事だといわれています。もちろん、恋愛上のパートナーを作ることは必ずしも必要ではありません。
これはかつて流行した「リア充」の定義には当てはまらないでしょう。こういった時代の流れからも、自然と「リア充」という言葉が廃れていってしまったと考えられます。
また現在では、恋人や同じ趣味を楽しむ仲間の有無について、相手に聞くことはセンシティブなことと指摘されることもあります。このような理由から、言葉が流行した当時の意味合いで「リア充」を用いると、嫌悪感を持たれることもあるので気を付けたいところです。
今時の言い方ってある?
リア充について新しい呼び方や今時の言い方ってあるのでしょうか。今の言葉の中ではリア充に見合う言葉はないとみてよいでしょう。2020年のコロナショック以降、サークル活動の中止を余儀なくされている団体も多いうえ、自分の生活の質を向上させる収入が得られるアルバイトが見つからないという人も見られます。つまり、緊急事態宣言の発令とともに誰もがリア充ではなくなりました。
また、リア充を経験した人の多くが大学を卒業し社会に出ているので、大学生が言う「リア充」の定義が崩れてしまったことも理由になります。社会人もしかりで、社会情勢の大きな変化から、自分の生活に向き合うだけで精いっぱいという人が多いのも現状です。
このことからミニマル生活などを確立させて低所得でも生活が充実している人を指す「プア充」という言葉が生まれました。英語の「Poor（貧しい）」からきている言葉です。
リア充に相当する最近の言い方をあえて探すとすれば若者言葉の一つで、「パリピ（Party People）」が近いかもしれません。厳密にいえば異なりますが、「今しかない一瞬を、仲間とともに思う存分楽しむ人々」と解釈できるため、リア充と近い意味だといえるでしょう。仲間内で楽しむといった点は相似していると考えられます。
しかし、パリピな人たちは自分本位で楽しむ集団といった見方もされるため、「現代版リア充」と派生した形で受け止めるとよいでしょう。
2022年夏の終わりには、新型コロナウイルスによって停止されていた社会の動きも少しずつ緩和されるようになりました。しかし、海外の情勢不安や国内の金融情勢によってまだまだ完全ではありません。リア充という言葉が完全に復活するには、まだまだ時間を要するものと思われます。
「陽キャ」と「リア充」は意味が違う!
現代語の一つに「陽キャ」という言葉があります。この言葉はリア充の新しい呼び方として解釈されることがあります。しかし、陽キャとリア充は全く意味が違うことを認識しなければいけません。
陽キャはキョロ充に近い
陽キャは、「陽気なキャラクター」の省略形です。陰気なキャラクターとなる陰キャと対で使われます。陽キャは「人の輪の中心にいる、明るい、リーダーシップがある」などリア充に近い印象があります。
しかし他人の評価ありきで、注目を集めたいためにリーダーシップをとろうとする人や、自分の理想のキャラづくりをしている人が多い傾向になります。どちらかといえば、リア充よりも「キョロ充」に近い印象かもしれません。「キョロ充」とはリア充を装っている人です。一人ぼっちでいる自分を他人に見られたくなくて常にあたりをキョロキョロしている様子から名づけられました。
陽キャは必ずしもリア充ではない
また、陽キャは必ずしもリア充ではありません。家と学校でキャラを180度変えている人が多い傾向にあるようです。一例として、両親の仲が悪いなど家庭環境の凄惨さをひた隠しにするため、学校ではわざと明るくふるまっているなど、陽キャでいるための理由を抱えている人も見られます。
両手放しで順風満帆なリア充とは相対する境遇の人も見られるのが大きな特徴です。
もちろん、陽キャだから恋人がいるとも限りません。恋人を作るために明るく目立つ陽キャになりたいと、好感度アップを目指して陽キャへイメージチェンジすることもあります。
気軽に使えるような簡単な言葉ですが、「陽キャ」は単純に解釈できない部分があります。これもリア充と大きく異なる部分です。多様性や個の尊重などが叫ばれるようになり、個人を取り巻く複雑な環境も言葉の陰に隠れているかもしれません。
しかし、「陽キャ＝影がある人」という図式はすべての陽キャに当てはまることではありません。先入観をもって接することは避けましょう。
若者言葉や現代語にはアンテナを張り巡らそう
リア充という言葉は長い時間をかけて広く浸透した言葉です。国語辞典に収録されるほど世間一般で認識されるようになりました。
しかし時代や社会情勢の変化から「リア充」という言葉が使いにくくなっている現状にあります。死語に近い感覚を持つという人も見られます。
またインターネットが個人に普及し、今ではヴァーチャル世界もリアルの一部となりました。これまでの間に、リア充にまつわるさまざまな新語が生まれています。しかし正しい解釈が根付かず、あいまいな解釈が独り歩きしている言葉も見受けられます。
いくつも意味があるのが若者言葉のメリットでもありデメリットともいわれます。コミュニケーションの齟齬が生じることもあるので、常にアンテナを張り巡らせ、さまざまな角度から言葉の意味を探るようにしましょう。
リア充の基本や定義については、「リア充の意味や定義・条件・略語。時代と共に変化していった流行の歴史について」の記事でまとめています。
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